会話のタネ!雑学トリビア

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現役の小学生が駐車場でかくれんぼ?いやいや彼らは自動車窃盗団の情報収集部隊かもしれません

自動車の窃盗被害件数は2万3775件にものぼるらしい。発生件数が毎年増加している理由として、近年、資金源の減少したヤクザや不良外国人が不正な中古車輸出をはじめたからだといわれている。しかし、国際的な窃盗団組織に現役の小学生が欠かせない存在になっていることはあまり知られていないだろう。
 ヤクザがシノギとして自動車窃盗団を組織したのは、暴対法が施行されたころだ。警察による組への締め付けでそれまでの稼業ではメシが食えなくなったのだ。最初のころは組のコネを最大限に使い、ロシアや中東へ盗難車を売り飛ばしていた。海外では車体のほかに日本製のカーナビも重宝される。少々古い型の製品でも中東では軍事兵器に使われるぐらい精度が高いんだそうだ。人気車種は、ハイエースランドクルーザー、ワゴンRなどが中東などの国外販売向け。セルシオ、クラウンなどが国内販売向けだ。
 自動車窃盗団は、組織的に動かないとうまく回らない。調査係、実行犯、運搬係、車体修理・改造係、書類偽造係、売却係(海外・国内流通)など、役割ごとに専門の係りに分かれるのだが、中でも一番重要な部署が、買い手が求める車体とカーナビを、街中から探しだす情報収集部隊だ。街中を歩きまわり、一台一台の車を見てまわる地味な仕事なのだが、これが難しいのは住人たちによる通報があるからだ。
 情報収集に適しているのは目視確認しやすい朝から昼の時間帯。しかしそんな時間に大の大人が人の車を覗いていれば怪しまれるのも無理はない。そこで考えたのが小学生を使う方法だ。小学生なら、日中、住宅地をウロウロとしても友達と遊んでいるようにしか見えない。日頃から目をかけている地元のヤンキー中学生たちを呼び出し、彼らの出身小学校から後輩たちを集めさせ、その子たちへの指導もすべて中学生たちに任せることにした。土地柄か、どこの小学校にもヤンキー予備軍の悪ガキが何人かはいるものだ。
 土日の昼間、集まってきた小学生をワゴン車に乗せ、向かうは遠方の住宅地だ。子供たちの主な仕事内容は地域の地図を持って街中を歩きまわり、どこに目的の車種があるか記していくこと。防犯装置やカメラの位置、番犬の有無、シャッターは手動か自動かどうかなど、詳細なメモをつけていく。
「ほな、5時に集合な!」
オレが号令をかけると、子供たちは2チームに分かれて、走り出す。中学生の先輩ヤンキーに怯えるヤンキー予備軍の小学生たちは、実に忠実に仕事をこなしてくれる。もしチンコロ(密告)でもしようものなら、中学入学と同時に、先輩からのリンチなど地獄の日々がはじまるからだ。子供たちは、地図とメモをポケットに入れ、無邪気に探検でも楽しんでいるかのように庭先に忍びこみ、車の情報を集めてくる。仮に家主に咎められたとしても、
「他人の家に入ったらアカンやろ!」
「キミ、どこの子供や?はよ出てけ!」
程度のツッコミで終わりだ。子供たちへのギャラは1人頭千円。10人使って1万円で情報が集まるのだから安いものだ。子供らも悪事だとわかっているので親にも内緒にしてくれるのだが、ごくごくマレに金遣いの荒さ(小学生に千円は大きい)から親バレし、その親がリーダーであるヤンキー中学生の親をせっつき、めぐりめぐってオレの連絡先を知るケースがある。
「ちょっと! ウチの子供に何かバイトさせているんですか?!」
対応策は考えてある。
「実は私、自動車のセキュリティー関係の会社を経営してまして、住宅地の調査をしてるんですよ。で、ウチの息子の学校の友達にお願いしてお手伝いしてもらってたんです」
「子供がお小遣いをもらったって言ってますけど?」
「ほんのお礼のつもりでして。ウチの息子にももう二度と誘わないように言い聞かせます。すいませんでした」
 同級生の親を演じておけば、相手もしつこく文句を言って関係をこじらせようとはしない。もしそれでも怒鳴り込んでくるようなら、セキュリティー会社のニセ名刺を添えた1万円分の商品券を渡すことにしている。
あなたの家の近所で、見たことのない小学生が遊び回っていたら、少し疑ってみたほうがいいかもしれない。