会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

食べログやぐるなび、ホットペッパーに登録されていないラーメン屋に行ってみた

最近は都内ならほぼすべての飲食店が食べログぐるなびホットペッパーに登録されており、事前に口コミである程度評判を知ることができますが、いくつかの店は未だに登録されておらずベールに包まれております。そんな店にこそ閑古鳥が鳴いているんじゃないかと調べていたところ、どのサイトにも登録されていない足立区の中華屋が浮上しました。いくつかの情報を総合すると閑古鳥はもちろんのこと、安かろう不味かろう、さらには従業員の態度が最悪という走攻守揃った店とのことです。 
早速現地に足を運んでみると店は静かな住宅街のド真ん中にあり、「中華料理」の暖簾が掛かっているだけで、お昼だというのに人の気配を完全に消していました。サーモグラフィで見ると真っ青の状態です。開きっぱなしのドアから入店すると意外なことに奥の席で小学生が2人、ラーメンを黙々と食べていました。夏休みとは言え、昼間から小学生が中華屋でラーメンを食べている光景はあまり目にしません。
席数は8つほど。「食事をしない人は外に出てください」という紙が目立つ場所に貼られています。従業員はどこだろうと捜してみるとカウンターの奥の真っ暗な厨房に還暦前後の夫婦がこちらを見て仁王立ちしているのが確認できました。
小学生2人がラーメンを食べ終わると無言で丼をカウンターに戻して店をそそくさと出て行ったので、なにか店の雰囲気に違和感を感じつつ席につきメニューを見ると「ラーメン200円」「カレー380円」とかなりの価格破壊を起こしています。今どきカップラーメンでも200円はするのにその価格と競っているのだから店の経営が心配にならざるを得ませんが、この安さだからこそ小学生でも何とか小遣いで来れるのかもしれません。 
表の暖簾では中華料理を謳ってましたが、中華以外にもオムレツ、カレーライス、トンカツ定食などバラエティに富んだメニューとなっています。その横には「全品大盛り有りません」というわざわざ書かなくてもいいような注意書きが達筆な文字で記されていました。 どれにしようか迷いながらも何気なく「オムレツにしようかな」と呟いたときでした。奥にいた店主のおっさんが「オムレツはタマゴだけでご飯がないけどいいのか」と無二の親友のような口調で話し掛けてきました。さらに「あっ、そうなんだ」と相槌を打つと店主の顔色が一変。唇をワナワナと震わせながら「そんなこともわかんねーのか。常識的に考えてオムレツとオムライスの違いぐらい分かるだろ」と2ちゃんねらー並に荒い口調で激昂しはじめました。 
事態を飲み込めず気まずい沈黙が流れどうしようか考えていると
「この調子じゃラーメンが何かもわかんねーかもしれねーな!」とさらに捲くし立てられました。「オムレツにしようかな」の一言でここまで会話を発展させることはおそら
タモリでも難しいに違いありません。さっきの小学生2人がやけに静かだった理由もおそらくここにあるのではないかと思われます。
「ご飯が欲しいならオムレツじゃな
くてオムライスだ!」と厨房の奥でシャウトしている店主をさらに怒らせたい衝動に駆られたのでカレーライスとラーメンを同時に頼んでみることにしました。店主は無言で頷き、麺を湯に投入したのでどうやらそこは怒りの琴線に触れなかったようです。ものの5分も経たぬうちに「おまたせ」という奥さんの声でカレーライスとラーメンが同時にカウンターに並べられました。まずはカレーを食してみます。一口目で明らかになったのは、薄いルーにとろみを出すために片栗粉を大量に混ぜているということです。昔ながらと言えばそれまでですが、片栗粉の塊を食べているような食感で「カレーにハズレなし」という飲食店の常識を打ち破った味でありました。ご飯に関してもあれだけ激昂してた割には水分が多くベトベトです。
こうなると200円のラーメンも怪しいなと思いつつ一口食べてみると、案の定です。もし佐野実が食べたなら顔を真っ赤にして丼を床にひっくり返すほどの味でしたが、200円と期待値のハードルが余りにも低かったせいか、どうにか冷静を保つことができました。  ラーメンは少量だったこともあり完食することができましたが、カレーライスはどう頑張っても半分まで食べるのが限界です。しかし店主のあの態度から推測すると食べ物を残すなんてことをしたら今度こそPTSDになるまで罵倒されるのは明らかです。どうしたものかと策を練っていると杖をついた老人がヨロヨロと店内に入ってきました。老人は唯一の常連らしく「いつもの」と頼んで、出てきた冷やし中華を食べながら店主と近所の悪口を交わし合っていました。今しかないと席を立ち、残したカレーの皿をカウンターまで戻そうとしたその時、店主が老人の会話を手で制してこちらの皿を覗き込んできました。もはやここまでかと思い、パッと店主の方を見ると小沢仁志みたいな顔をして小刻みに震えていました。余りの迫力に声が出ず過呼吸になり、580円キッチリをテーブルに置き店を出て100m11秒台の速さで駅に向かいました。