会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

閑古鳥が鳴いている婦人服店はどんな会話をしているのか

町の商店街にはなんでここが営業続いてんだろっていう婦人服屋が必ずいくつも存在します。いつ店の前を通っても客はいないし、それどころか店主の姿さえ見えないなんてことがよくあります。
こういう店はどうやって営業を続けているのでしょうか。おそらくどっかのまぬけな社長のおっさんが愛人の女に酔った勢いで店を持たせるとか約束しちゃってその結果できたのが商店街の婦人服屋なのではないでしょうか。全国の愛人の数=全国の商店街の婦人服屋の数ではないかと識者の間では囁かれておりますし、現にそういう店の店主は大概ケバい水商売系のオバサンが務めています。客のターゲット層としては主婦なんでしょうが、今日日ユニクロやらイオンやら安くてそこそこ質の良い衣類量販店はいくらでもありますし、ますますこういう商店街の婦人服屋の経営状況が不思議でなりません。
今回は近所で気になっている3軒の婦人服屋を訪ねてみました。そもそもこんなに客のいない婦人服屋が近所に3軒もあること自体異常です。原宿のH&Mとフォーエバー21が敢えて隣同士で店を出したのとはわけが違います。よく誰も何も言わずに今日までやってきたなと思います。
早速いつも閑古鳥が鳴いている某婦人服店に足を運んだのですが、店の前まで来ると店内からなにやら話し声が聞こえます。珍しく客がいるのかと覗いてみるとなんと店の主人の前には板前の格好をした近所の寿司屋のおっさんが座っていました。この寿司屋も暇なんでしょうか。寿司屋の名前が刺繍された和帽子をそのまま被って喋っています。
何を喋ってるのか聞こうとしたのですが「だからよ!つまりよ!それでよ!」っていう接続詞だけをやたらデカイ声で発してるので会話がよく理解できませんでした。

しばらくすると寿司屋がこちらの存在に気付いたので「あ、店主に客がいることを伝えてくれるのかな」と思っていると、首を捻っただけでまた前を向きなおし店主と会話を再開しました。それでも粘って店内にいてみたのですが、たまに寿司屋がこっちをチラチラ見るだけで何の進展もありません。しょうがないから服を手に取って店内をウロウロしてみたのですが、店主には一言も声を掛けてもらえませんでした。今考えるとひょっとして閉店中だったのかとさえ思います。
店を変えて2軒目です。交通量の多い大通りに面した婦人服屋で立地条件はかなり良い筈なのですが、如何せん客はゼロ。しかしここでは店に一歩踏み入れた瞬間に店主のオバサンが「ここは女モンだよ」と話しかけてきました。
「母親へのプレゼントを捜してまして…」と言うとオバサンは目を輝かせて「年齢は?体型は?」と聞いてきました。「60過ぎで小柄です」と答えると「あらやだ。この店、Lサイズしか置いてないのよ」と衝撃の答えが返ってきました。婦人服の店でLサイズのみです。どんだけ狭き門なんだって話です。Lサイズを着る婦人ってだけでかなりふるいに掛けられます。
気まずくなったので「この特売品セールはいつまでやってますか」と訊ねると「ずっとやってるよ。定休日以外はずっとやってる」という頼もしい返答。「早く買わないと工場に返しちゃうから。これなんて明日には工場に返すんだから」と急かしてきます。工場に返すっていう仕組みがよく分からないのですが、その後も工場工場としきりに言ってたので、「お店は儲かってますか」と天然のフリをして訊いてみると「私は別に儲かろうがどうだろうが関係ないからさ」とちょっと切れ気味に意味深い発言をしました。「私には関係ない」ってことはやはりオーナーの愛人なのでしょうか。さすがに居づらくなって店をあとにしました。
3軒目は婦人服を店の外にまでハンガーで吊るしてて、やる気を感じられます。看板には〝おしゃれな店〞とも記されていました。意気揚々と入店するとなんと店の婦人服にはすべてクリーニングされたてのビニールが掛かっていました。クリーニング屋と間違えたと思い店を出ようとしたときに店主のババアに声を掛けられました。
「どんなの捜してるの」
「母親用なんですが」
「じゃあ、これなんかどう」
と言って出してきたのがド派手なセーターでした。深夜にやっている昭和名曲全集の通販の映像で同じセーターを着ていた人が映っていた気がします。これは買いだと思い値札を見るとなんと3万円。ちょっと高すぎるなと苦い顔をしていると「まあ、2万円に
はできますよ」と何も言ってないのにいきなり30パーオフになりました。それでも迷っているとババアは向こうを向きながら「1万7千円」って呟きました。明らかにこっちの出方を窺っている様子です。まさかこの婦人服屋でこんな値段の駆け引きが行われているとは思いませんでした。再び「1万5千円」と呟いたので聞こえないフリをして「どういう服が売れてるんですか。このお店って客層どんな感じなんですか」とまた天然のフリをして訊いてみるとやはりそれはババアのNGワードだったらしく「1日1着、買ってもらえたらやっていけるのよ。買うの、買わないの」とかなり荒い口調で言われたので、「母親に相談してきます」と言い自転車に飛び乗り一番早いギアに切り替え、立ちこぎでその場をあとにしました。