会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

自称芸能人御用達のユーラシア大陸料理店

和食、中華、イタリアン、フレンチ…街を歩けばどの国の料理も揃っているし、ついつい迷ってしまいがちですが、それらすべてをカバーしてくれるオールマイティの店が存在するという匿名情報をこの度キャッチしました。
訊けば「中級ユーラシア大陸料理」というわけのわかんないジャンルらしく、ユーラシア大陸という余りにもざっくりとした括りで経営しているようです。
ユーラシア大陸は地球の全陸地における37%を占めており、つまりこの店は世界の約4割の料理に対応していると言えます。一体どのようなレパートリーなのか。「中級」という点も気になりながら、早速現地へと急ぎました。
都内某駅から3分、大通りにも関わらずひっそりと暗く佇む建物を発見しました。
灯りを頼りに細い階段を上がっていくと壁には何故か黒いドレスが貼り付けられており、その首の部分には女の顔の絵が描かれていたので、思わず階段から転げ落ちそうになりました。
この時点で客を招く気ゼロパーなのは察しがつくのですが、勇気を出してドアを開けると今度はロンゲの大男が立ち尽くしていたので、さすがの温厚な自分も恐怖のあまり思わず手が出そうになりました。
「どこでもご自由に」と大男が言うので店内を見渡すとかなりの広さがあり、おそらくすべて埋まれば 人以上は軽く入れそうな座席数ですが、残念ながら半分以上は私物の物置場と化しているようで、入店した午後8時の時点で客はゼロ。
基本的に中世ヨーロッパ時代の絵画が飾ってある中、振り子時計にはなぜかグラビアアイドルらしき写真がはめ込まれており一段と不気味さを演出していました。さらに隣のサイン入りの絵画の隅には男の写真があり「逮捕されました」の文字。大男に訊ねると「写真の男がこの作品の贋作を作り逮捕された」とのことで、当然ながら
そこで会話はパタリと止まり、大男はメニュー表を無言で渡してきました。
気になるメニューを眺めるとさす が中級ユーラシア大陸料理。ほとん どが聞いたことのない名前の料理であり、ピザやパスタ以外はさっぱり 分かりません。とりあえず「ターメイヤ」と「グジェール」なる料理と 赤ワインを注文。すると大男が「メ インデッシュは?」と言うので「またあとで頼みます」と伝えたところ、顔を近づけ「メインデッシュは時間かかるので先に注文して下さい。8千円のコースがオススメです」と早口で説得されました。
怖くなって慌ててアンチョビのピザを頼むとさらに「で、メインデッシュは?」と同じ質問。どうやらピザはメインと認められないようで、
「この店はね、値段見て分かる通り、芸能人を相手にしてる店なのよ」と急に荒い口調で捲くし立ててきました。この店に芸能人が来るのはちょっと意外だったので深く訊いてみると昔、さまぁーずが「もやもや」で通りすがっただけのようでした。結局自分は一般人なのでメインの注文を諦めてもらい、大男は不服そうに首を捻りつつ厨房へと消えていきました。
15分ほど待つとまずは「ターメイヤ」が運ばれてきました。しかし大男は「ターメイヤ」をお盆に乗せたまま無言で立ち尽くし、テーブルに置こうとしません。疑問に思ってると顎をクイクイと動かして何やら訴えてます。コース料理を勧めてきた時は流暢に喋ってたはずなのですが、急に寡黙な不器用キャラにシフトしたようです。
どうやらテーブルの上のナプキンや皿をどかせとアピールしてるので、それを片付けるとようやくテーブルに「ターメイヤ」を置いて頂けました。「ターメイヤ」は見た目は黒くて丸く一見ただの焦げたハンバー グです。しかしフォークで割ってみると中から現れたのはほうれん草。食べてみると味はほとんどそのまま、ほうれん草。周りにお焦げが付いたほうれん草でした。困惑していると今度は「グジェール」が運ばれてきたので急いでテーブルの上を片付け「グジェール」を置いて貰います。こちらはシュー生地にチーズが入ったものなのですがなぜかカチカチで、それが5個もあるので完食するのに手こずりました。そして最も大変だったのがアンチョビのピザでありました。ピザとは名ばかりでナンの上にチーズとアンチョビを乗せてそれをレンジでチンしただけのものなのです。ユーラシアというよりサイゼリアに近いかもしれません。
ほとんど味が無いわりにボリュームだけはあり、「ターメイヤ」と「グジェール」で満身創痍だったこともあり、完食は無理だと察知。しかし大男の態度から察すると料理を残すと何を言われるか分かったもんじゃない。
そこで苦渋の決断をしナプキンでピザを包み、それを上着のポケットに押し込み、会計へ。「注文少なくてスミマセン」と謝ると「今日ぐらいの少な目の注文で良いから来る回数を多めで頼むよ!」と予想外の返答がありました。出口まで見送られてガラスケースの人形を指して
「1 8 0 0 円でどう?」と言われたのをやんわり断り、チーズの匂いが染みついたポケットを気にしつつ店をあとにしました。